相続と生命保険 落とし穴

生命保険金は受取人固有の財産となるので相続財産に含まれないということになっています。

 

お父さまが亡くなり、不動産(自宅)が2,000万、現金が1,000万、生命保険金が1,000万残されたました。

生命保険金の受取人は結婚して家を出ている長女受取人でした。

 

残された奥さまが不動産(自宅)2,000万を、実家を継いだ長男が現金1,000万を相続すると、

お父さまが残した4,000万をきれいに法定相続分で分けたかのように見えます。

 

確かに、相続税の計算上は生命保険金もみなし相続財産として計算に入れなければなりません。

しかしながら、遺産分割の対象となる相続財産はあくまでも不動産(自宅)の2,000万と現金の1,000万のみです。

 

あくまでも、生命保険金の1,000万は受取人である長女のものなのです。

 

ですので、法定相続分で相続財産を分けるとすると、不動産(自宅)の2,000万と現金の1,000万の合計3,000万を

奥さまと長男、長女の3名で分けなければならないのです。

 

なんだか生命保険金をもらった長女がめちゃくちゃお得じゃないですか。

 

と言うわけで、生命保険金が高額で著しく他の相続人との間で不公平になるような場合、

たとえば上記の例で、生命保険金が5,000万だったとすると、

長女の取り分が奥さまや長男に比べ極端に多くなります。

このようなケースでは、生命保険金を特別受益による持ち戻しとして、

相続財産に加えて遺産分割をすることになります。(2004年10月最高裁判決)

 

いくらの生命保険金から相続財産に持ち戻すのか、相続財産総額との割合なのでしょうが、

相続人の誰かが不公平だとして訴訟を起こした場合、

持ち戻して遺産分割すべきとの判決が出る可能性が高いと言えます。

 

誰か特定の人に財産を残してやりたいということで生命保険金を活用する場合があると思います。

 

全体の相続財産とのバランスを考え、あまり極端に高額な保険金が特定の人に流れないように、

財産を残す側の人間が気を遣わなければなりませんね。